参考資料 【2030半導体の地政学 太田泰彦 日本経済新聞出版】
そもそも半導体とは物質の名称である
電気を通す金属などの物質が「良導体」。ゴム・プラスチックなど電気を通さないのが「不導体」。その中間にあり、半分だけ電気を通すから「半導体」とよばれる。
世界半導体市場統計(WSTS)によると、半導体の世界市場規模は、2021年に5000億ドル(約51兆円)を超えようとしている。
投資家目線で本書を紹介したいと思います。
ソフトバンク
ソフトバンクは320億ドル(約3兆5000億円)でアームを買収。
アームはバリューチェーンの最上流でチョークポイントとなる企業。
クアルコム・アップル・エヌビディアなどのメーカーは、アームから基本回路の設計図をライセンスの形で買い、このアームの図面を組み合わせることで、自社のチップの設計図を完成させている。
スマホ・タブレット端末に搭載されているチップの多くはアーム仕様の設計図が使われている。
極端に言ってしまえば、各メーカーはアームの図面が無ければ自社のチップを作ることができない。
2020年9月、ソフトバンクは米企業エヌビディアにアーム売却と発表、売却額は400億ドル(約4兆4000億円)
2021年8月、英政府の競争・市場庁が、買収に異議を唱える報告書を公表。
バリューチェーンの要であるアームが米企業の子会社になれば、米国が半導体産業のすべてを握ることになります。
英政府が買収を阻止しなければ、地政学の駒を失う形になってしまいます。
まだ買収は成立していない。
つまり、ソフトバンクは例え大赤字でも切り札になるアーム株がある、今後世界的な半導体重要が増せば、売却額もあがる可能性がある事、先日IPOでの買収も取りざされていましたが、まだ解決はしていません。
台湾のTSMC・ファウンドリーの世界大手が、アメリカのアリゾナに工場建設を発表。
TSMCは技術力・規模でも世界のどのファウンドリーが逆立ちしてもかなわない怪物級の大企業なのです。
エヌビディ・クアルコムなど、世界のほとんどの半導体メーカーが製造を委託し、TSMCなくして製品を市場に送り出せないほど。
バイデン政権の狙いは、米国に足りない製造分野の穴埋めで、自前のサプライチェーンを築けば、外国を攻めることもできるし・守ってもできるためである。
半導体の製造を担うファウンドリー業界の2020年の世界シェアをみると、TSMCの売り上げが59.40%で圧倒的な首位、2位のサムスン電子で13.05%で続く。
ファブレスとファウンドリー
- 米国では自社で工場(ファブ)を持たないファブレス企業が多い。
- ファブレスから製造を受託する企業はファウンドリーと呼ばれる。
日本が首位なのは、ウエハーだけにすぎない。
東京エレクトロンやSCREENホールディングスなどの日本勢は、いくつかの領域ではトップシェアを握るが、製造装置全体では米企業の存在感が圧倒的である。
素材で言えば、ウエハーの生産は信越化学工業とSUMCOが有力で、日本の2社だけで世界シェアの半分を占める。
あまり知らていないけれど、食品会社の味の素は、半導体の素材として欠かせない絶縁材で世界シェアのほぼ100%を握っている。
TSMCが次世代の製造技術に挑む際には、素材メーカーの力が必要になるはず。
しかし、現時点で素材業界が強いからといって安心できない、素材メーカーはファウンドリーについて移動するケースが多い。
アリゾナにTSMCの工場ができれば、素材プレイヤーもアリゾナに生産拠点を設けるだろう、日本企業も例外ではない。
日本のウエハーメーカーの地位も安泰とはいえず、3位の台湾の環球晶円は2020年、4位のドイツのシルトロニックに対するTOBを発表し、2021年3月に成立、両者合わせた売上高でSUMCOを追い抜き2位に浮上しています。
TSMCは10月14日に日本に工場建設する方針を発表した。
建設地はソニーが画像センサーを製造している熊本が有力。
ソニーは「CMOSイメージセンサ」の半導体チップで世界シェアの50%以上を握る。
代表的な用途はスマホのカメラで、全体の売上高の8割を占めている、これからはEV向けの需要が増えると見込まれる。
本書は半導体の地政学を分かりやすく説明してくれています、半導体が世界を変えていくのは間違いなく。
今後、国同士が誘致や買収と動きが活発化していくのは明らかで、そんな中で今後の株式投資に大きく参考になる📚本でした
まだまだ、紹介してない内容も多いので、是非ご自身で手に取って見てくださいね。
旅する投資家。